「で、どうしてほしいの?」
こう返されて、モヤッとしたこと、ありませんか?
こっちは、明らかに非があることを指摘した。
相手は、一応それは認めてる。
でも、本気で謝罪する感じじゃない。
「はいはい、わかったわかった」
「で、どうしてほしいの?」
そんなスタンスで返してくる。
ムカつくだけじゃない。
ただ論点がズレてるわけでもない。
なんとも言えない、嫌な感じが残る。
「お前はどの立場でしゃべってんの?」
このセリフを返されたときに、こっちが感じる本音は、たぶんこれです。
「お前はどの立場でしゃべってんの?」
本来、非があるのは向こうです。
頭を下げる側、下手に出る側のはず。
それが普通の構図です。
でも、相手の態度は違う。
余裕ぶっこいてる。
上からモノを言ってる。
「要望を聞いてやる」みたいなスタンス。
事象としての立場と、振る舞いが、まったく一致してない。
これが、いちばんのモヤモヤの正体です。
本人は「自分のほうが立場が上」と思っている
なぜ、こんな振る舞いになるのか。
理由はシンプルで、本人の頭の中では「自分のほうが立場が上」だからです。
非があるかどうかは、別の話。
事象として非を負っていても、本人の中の序列は変わらない。
「俺のほうが上、こいつは下」
「だから、本気で頭を下げる必要はない」
「はいはい、で済ませればいい」
これが、本人の認識です。
こっちから見ると、「いや、今お前が責められてる側だよね?」となる。
でも、本人にはその認識がない。
あったとしても、その認識を振る舞いに反映しない。
事象としての立場(非を負ってる)と、内的な序列認識(俺のほうが上)が、矛盾している。
そして本人は、事象じゃなく、内的な序列認識で振る舞う。
だから、余裕ぶっこいた態度になるんですよね。
「で、どうしてほしいの?」が出る瞬間
このセリフが出る瞬間、本人の頭の中はこうです。
非を指摘される。
「まあ、確かに俺がやったな」と、一応認める。
「でも、こいつ相手に本気で謝罪はありえない」と判断する。
「はいはい、わかったわかった、で済ませよう」と適当に対応する。
でも、こっちが食い下がる。
本人の想定では、これで終わるはずだった。
食い下がられて、想定外。
「めんどくさいな」
「もう要望を聞いてやる体で、上から行こう」
そして出てくる。
「で、どうしてほしいの?」
このセリフが、同時にいくつものことをやっている
たった一言ですが、このセリフは複数の効果を持っています。
まず、立場を逆転させます。
本来、加害者と被害者だった構図が、急に「要望を聞く側」と「要望を出す側」になる。
本人が、こっちより上の位置に移動する。
次に、論点をすり替えます。
本来の論点は、「あなたの行動に問題がある」だった。
それが、「あなたは何を求めているのか」にズラされる。
行動の問題が、要望の問題に置き換わる。
そして、感情のポジション取りもしています。
本人は冷静に「で、どうしてほしいの?」と言う。
こっちは「いや、そういうことじゃなくて……」と感情的に応じざるを得ない。
結果、相手は冷静、こっちは感情的、という構図になる。
これらが同時に起きる。
だから、こっちは何重にも追い詰められた感じになる。
モヤモヤが大きくなるのは、当然です。
取引先に対しても、同じスタンスでいけるのか
ここで、一つの問いが効きます。
このタイプの人、取引先に対して同じ態度を取れるでしょうか?
会社のトラブルで、取引先に頭を下げる場面。
そこで「で、どうしてほしいんですか?」と返せる人は、たぶんいません。
取引先には、ちゃんと頭を下げる。
真摯な態度を取る。
「はいはい」なんて絶対言わない。
強い相手だからです。
でも、あなたには違う。
余裕ぶっこいた態度で、「で、どうしてほしいの?」が出る。
つまり、本人は相手を見て、態度を選んでいるんですよね。
強い相手にはちゃんとやる。
弱いと見た相手には、適当でいい。
その「弱いと見た相手」に、こっちが選ばれている。
これが、いちばんモヤモヤする部分です。
「上に報告する」と言うと、トーンが変わる
もう一つ、決定的な証拠があります。
「で、どうしてほしいの?」と余裕ぶっこいてる相手に、こう言ってみると、態度が変わります。
「これ、上に報告しますね」
すると、急にトーンが変わる。
急に慌てたり、態度を軟化させたり、逆に攻撃的になったり。
これが意味すること。
本人は、自分の非がちゃんと「報告されるとマズいこと」だと、最初から認識してたんです。
「大したことじゃない」と本気で思ってたわけじゃない。
ただ、こっち相手なら騒ぎ立てない、と踏んでただけ。
上に報告される=想定外の事態。
自分の見立てが崩れる。
だから、慌てる。
つまり、最初から相手を見て、態度を選んでいた証拠です。
誰彼構わずこの態度を取る人は、別の問題
ちなみに、ここで補足しておきたいことがあります。
「で、どうしてほしいの?」を、誰彼構わず言う人がいるとしたら、それはまた別の話です。
上司にも、取引先にも、強い相手にも、同じ態度を取ってしまう人。
そういう人は、相手の立場や強さを見極める機能が、根本的に欠けている可能性が高い。
そっちは、別のタイプの「困った人」になります。
>>未熟な大人とは何か|話が通じない、論理が届かない「困った人」の構造
でも、「で、どうしてほしいの?」を、相手を選んで使える人は、ある意味、計算ができている人なんですよね。
だから、ある意味で、より卑怯です。
モヤモヤの正体は、「下に見られている」という認識
ここまで見てきたことを、整理します。
「で、どうしてほしいの?」と返されたとき、こっちが感じるモヤモヤ。
これは、相手の行為そのものへの怒りじゃないんです。
本当のモヤモヤは、「自分は下に見られている」という認識です。
相手の態度に、それが滲み出てる。
「お前は本気で謝る必要のない相手」
「お前は上から接していい相手」
「お前は丸め込める相手」
そういう判断が、振る舞いから透けて見える。
しかも、相手はそれを言葉では言わない。
態度に滲ませてるだけ。
だから、言質も取れない。
「下に見てるよね?」と問い詰めても、「いや、そんなつもりは」と返ってくるだけ。
これが、消化できないモヤモヤの正体です。
「気にするな」では、このモヤモヤは消えない
こういう場面でよく言われるアドバイスがあります。
「気にしないほうがいいよ」
「そういう人もいるから」
言ってる人に悪気はないと思います。
でも、これでスッキリした人は、たぶんいません。
このモヤモヤは、感情の問題じゃないからです。
「気にしない」と決めれば消える種類のものではありません。
本当に消したいなら、感情で蓋をするのではなく、構造として理解するのが効きます。
「あ、この人は、俺を下に見ているんだな」
「だから、こんな態度を取れるんだな」
「強い相手には、絶対こんなことしないだろうな」
そう見えると、不可解さがだいぶ消えます。
そして、相手を変えようとする消耗からも、解放されていきます。
こっちの「お前はどの立場で?」という違和感は、正しかったんです。
ちゃんと、相手の態度の中の「下に見ている」を受け取っていただけです。
同じ系統の「困った人」を、サイト内で扱っています
「で、どうしてほしいの?」と言うタイプは、サイトで扱っている他の「困った人」と、根っこは同じです。
自分の非を、本気で引き受けたくない。
形式だけで済ませようとする。
相手を見て、態度を変える。
同じ系統の派生パターンを、それぞれ別記事で扱っています。
>>「そう思わせたならごめん」にモヤモヤする理由
>>「謝ったらいいの?」って言う人、だいたい謝る気ない話
>>なんでこの人、すぐ被害者みたいなこと言うの?
こういう人と、どう関わるか
とはいえ、こういう人とも、関わり続けないといけない場面はありますよね。
職場、家族、ご近所。
すぐに距離を取れない相手のときは、関わり方を変えるしかありません。
基本は「戦わない、変えようとしない、自分の課題に集中する」というシンプルな考え方ですが、これを身につけると、こういう人を相手にしたときの消耗が、だいぶ減ります。